河井寛次郎記念館は、五条坂を 清水寺方向に歩き 東大和大路通り 手前、 若宮八幡宮を少し南に入った所にある。
このあたりは京都の伝統産業、清水焼の中心地であった。
毎年8月7日から10日は
陶器まつり が開かれ五条坂の両側には何百軒もの陶器を売る露店が並び、夜遅くまでにぎわう。
清水焼を作る工場や窯は、東山を越した山科の方に移っているが、それでもこのあたりをそぞろ歩くと、小さな陶器店や崩れかかった作業所があったりする。
そんな一角に 河井寛次郎記念館がある。
ここは清水寺へ行く途中の茶碗坂にある 京都連絡事務所 から歩いて5分程のところで、仕事に疲れるとよく訪れる。
私がいつも元気をもらう場所でもあります。
河井寛次郎は優れた陶芸家や木彫刻家そして民芸運動の指導者として類まれな才能を発揮しました。
この建物は1937年に建てられた寛次郎氏の住居兼創作の為の工房で、住宅をそのまま美術館にしたものです。
陶芸や彫刻の作品はじめ収集したコレクションなど、自身が生活した空間の中で見ることが出来るのが何よりも魅力である。
寛次郎氏の作品の好きなところは、清水焼の優美で繊細な陶器とはとても似ても似つかない強烈な個性をもち、その縄文的な力強い作風と色彩の強烈さに引かれます。
私はそんな作品も好きですが,島根県安木(やすぎ) で建築を家業にする家に生まれたことや、それに造形力も加わり、家そのものの空間や家具、建具などがとても素晴らしい。
現代の家にはない懐かしい
「古(いにしえ)の空間」 を感じる事ができます。
とくに住まいの中心をなす 囲炉裏(いろり) の上部は大きな吹き抜けがありこの家の豊かさを特徴づけています。
そんなやさしくおおらかな空間は、私の好きな建築でもあります。
住まいと陶芸の作業場や登り窯との間の中庭も私の好きな所で、陽だまりに座っているとゆったりとした時間が流れ,時が経つのを忘れてしまいそうです。
力強い木組の構成、白い砂壁、障子からやわらかな光、そんな空間と作品の中に身をおいていると、自然に力と元気がわいてくるような気がします。
創作の合間に書いた 「自筆のノート」 に残した言葉の数々も素敵です。
此世(このよ)は自分をさがしに来た処 此世は自分を見に来た処 暮らしが仕事 仕事が暮らし 「いのちの窓それ以降」 より
柱時計の刻む音、歩くと床のきしむ音といった
聴覚。
木の椅子に座り家具に触れることによって感じる
手の 感触と温もり。
河井寛次郎記念館は、私たちが失ってしまった
ゆたかで 居心地のいい空間 を体現できる貴重な場でもあります。