狭小地でも 「中庭のある家」 ができる (2)

  • 2012.07.26 Thursday
  • 13:49
■ 玄関と中庭 

玄関に入った時の第一印象は大切です。玄関先だけで帰る方もおられますし、玄関は家の個性と共に、住む人の人柄まで現し、暮らし方や考え方まで垣間見られる大事な場だと考えます。

私はプラン作りの出発点は玄関からいつもスタートします。
精神性、機能性、そして家族が帰った時ホットする心落ち着く玄関を常に設計の大切なポイントと心掛けています。


玄関に入ると中庭がみえる
玄関に入ると中庭が見えるプランをよく設計します。
現代の家の玄関は、ほかのスペースは広くても玄関にはあまり気を使わず、単なる「靴脱ぎ場」としてしか考えていなく、暗く日中でも電気を点けなければなならない家が多い。そしてスペースも狭苦しい場合が多いのですが、目の前に中庭があると新鮮な驚きを受けます。

また、明るさ、風通り、陰影、広がり、そして中庭の樹木や花は住んでいる人の想いや温かさを伝えます。


(ブログ2012・06・12の続き・ 敷地図参照)
A,B 案とも玄関とホール、中庭が一体となったプランです。 住む家族の暮らしやこだわりによってガラスの大きさ、見せ方、そして照明の演出、仕上げの材料を決めます。
 

A 案  1階平面図
  


エントランス(ポーチ)の格子から中庭の樹木が少し見え、玄関に入ると大きなガラスから中庭が目に入ります。敷地面積は狭いのに中庭、玄関ホール、階段が一体となった空間はとても豊かです。
【サニタリー部分】 洗面所・浴室 
洗面所・浴室から中庭が見え、とても明るく気持ちが癒されます。それぞれ2ヶ所の窓があり風が吹き抜けていきます。 

中庭の見え方は、上部の木製ブラインドで調整します。玄関収納の下は間接照明で足元を優しく照らし家族を温かくむかえます。足元を照らす間接照明は、お年寄りにも限りなく優しい。


B 案  1階平面図



アプローチから右に植栽を見ながら玄関に入ると、正面に中庭が広がっています。玄関ホールはA案ほど広がりはありませんが、その分だけ落ち着きがあって、上品な玄関です。
【サニタリー部分】 洗面所・浴室
浴室の前には中庭に面したバスコートがあり、アウトドア気分の気持ちのよい空間です。洗面所側にも中庭が見える窓があり、明るく風が通ります。
                                      



玄関も部屋のひとつです。どこにも照明器具は見えません。狭いからこそ照明器具を見せず、和風の趣きを見せ、全て間接照明(建築化照明とも言います)で空間をやわらかく演出しています

5年前のリフォーム「うれしい手紙」・雑感「劇的ビフォー・アフター」

  • 2012.07.17 Tuesday
  • 18:09
山崎さんからの「うれしい便り」

5年ほど前に増改築(リフォーム)した山崎さんからお礼の手紙をいただきました。
都市銀行の支店長を15年以上勤め、著書も多く、銀行退職後の現在は、業績不振店を優秀店に復活させた経験を生かし、講演で多忙な毎日ですが、家に帰ってくるとほんとうに心が癒されるそうです。
長い歳月が経っても、喜んで日々の暮らしを楽しんでいる様子をお聞きすると、設計者としてとても嬉しく、また力が湧いてきます。
増改築は新築より大変です。しかし、家族のライフスタイルの変化や家族の成長と供に家も成長するその状況に、建築家がお手伝いすることは、新築とは別の味わい深いものがあり、今後も力を入ていきたいと思います。    
HP 「お客様の声」のコーナーに頂いたお手紙を掲載しています。


雑感 「劇的 ビフォー・アフター」について

テレビで劇的に大きく変わるリフォームが人気です。工事中は一切設計者に任せて、完成後注文者がはじめて足を踏み入れ、劇的に変わった我が家の変わりように大感激することが、番組の目玉になっています。

しかし、本来増改築(リフォーム)工事は、これまでの家族の暮らしの延長に位置付けられるものですから、設計中はもとより、工事が始まってからも、何回も打ち合わせし、設計者は家族の歴史を読み取りながら、家族とともに考え、工事を進めていくことが必要だと考えています。
劇的に変わった家で日常の暮らしがはじまってから、違和感を感じなければいいのですが。 

建築家・吉村順三氏がモデルの小説 「火山のふもとで」 松家仁之 作

  • 2012.07.01 Sunday
  • 15:40
新潮7月号 「火山のふもとで」 松家 仁之 作 を読んで

小説を読み始めて1ページか2ページですぐこれは吉村順三氏と吉村設計事務所をモデルにした小説だと分かりました。
文章の清潔さと細やかな登場人物の描写、そして建築への眼差しの深さは、この作家(職業は編集者)が建築を心から愛し、かつ吉村順三氏を敬愛しているのではないかと思いました。

主人公の「ぼく」は大学の建築学科卒業後、尊敬する建築家の設計事務所に入所し、事務所の優秀な先輩や事務所で出会う魅力的な二人の女性との関係。
しかし小説の主軸は事務所を挙げて国立図書館の指名コンペに立ち向かう先生やスタッフが織りなす熱い物語です。そして29年後という長い歳月を経たあとの、人生の時間の短さと重さが、読む人の深い叙情と儚さを誘います。

コンペの競争相手は文章の中から建築家・丹下健三氏とすぐ分かり、また吉村氏が実際に別荘を設計したクライアント、野上弥生子氏といった実在の人物を想起させ、虚構と現実が交差し、原稿用紙650枚という長編にもかかわらず、一気に読みました。

小説に出てくる設計事務所は1970年代でCADの機械製図ではなく、エンピツで図面やスケッチを描いていた時代。 
類まれな才能を持つ建築家と先生を尊敬する所員が、夏の間だけ事務所を東京から軽井沢「夏の家」へ移し設計活動に専念出来るとは、大らかで、いい時代だったのかもしれません。

それにしても作者は、山荘や別荘の名作を多く残した軽井沢を舞台に、実に細やかに語る建築のディテールや家の描写は相当建築の本を読みこなし、当時の旧所員からの綿密な取材をもとに書き上げたのだと思いますが、とても上質な物語であり建築小説になっていると思います。

私は吉村順三氏の作品や解説はほとんど目を通していますが、あれほど多くの作品を残しながら自ら書いた著書はほとんどありません。
残っているのは雑誌に掲載された文章を集めて本にしたものか、様々な機会に語られた断片的な言葉をまとめた、「語録集」などしかありません。

しかし、断片的な言葉は、いつどんな状況で語られたか読む者には分かりませんが、この小説では所員との会話や、設計を進めるプロセスの中や、時には風景を見ながらで肉声として語られているので、小説とは言いながら、、吉村順三そのものの輪郭やその時の心の鼓動が浮かび上がってくる仕掛けになっています。

その意味では小説の楽しさと共に住宅が好きな人や、吉村ファンにとっても嬉しい小説ではないでしょうか。

終章のコンペの成り行きや結末は私自身、少し違和感を感じましたが、浅間山を仰ぎ見る軽井沢の季節の移り変わりの美しい描写や、音楽や料理のこだわりなど、抑制された文章表現と共に久しぶりにいい小説出会った思いでした。


読んでもう少し時間を置けばもっと内容の濃い感想も述べられたのでしょうが、昨晩読み終えてとりあえずブログに。 多少睡眠不足気味です。


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